このケースは、「国際引っ越し後の子どもの様子」をテーマにしたミニリサーチの中で、
個別にお話を伺った内容をもとにしています。
家族の背景
・両親+男の子3人
・日本 → バンコク(4歳・2歳)
・バンコク → シンガポール(7歳・5歳・0歳)
起きたこと
タイからシンガポールへ引っ越したあと、お子さんたちに少し気になる様子が見られたそうです。
テレビを見ながらぼーっとしている時間が増えたり、大きな声を出したり、
そわそわと落ち着かない様子が見られたり。
お母さんは当時、
「どうしてこんな様子なんだろう」
と戸惑うこともあったと話してくださいました。
親もまた、変化の中にいた
その頃、お母さん自身も新生活への対応に追われていました。
新学期の持ち物の準備。
学校へ提出する書類。
登校時間や通学バスの時間の確認。
インターナショナルスクールになれば、持ち物への記名を英語に書き換える作業などもあります。
さらに、
- 新しい国のお金の単位を覚える
- 買い慣れないスーパーで生活用品を探す
- コンドミニアムの出入口やルールを覚える
など、生活の土台を作ることで精一杯だったそうです。
そのため当時は、子どもの落ち着かなさを環境の変化によるものだとは考えず、
つい説教してしまったり、失望した気持ちになったりすることもあったそうです。
国内の引っ越しでも起きたこと
その後、同じ家族は国内での引っ越しも経験しました。
道を挟んだすぐ近くへの引っ越しだったにもかかわらず、
次男には大きな心の揺れが見られたそうです。
「たくさん思い出があるんだ」
「友だちと離れるのも寂しい」
そんな言葉を口にする一方で、
新しい家のプールで楽しそうに遊び、
「この家、最高!」
と話すこともありました。
けれど夜になると急に泣き出したり、
「前の家を見に行きたい」
と言い出したりすることもあったそうです。
楽しみな気持ちと寂しい気持ち。
その両方の間で揺れているように見えた、とお母さんは話してくださいました。
このケースから見えること
国をまたぐ引っ越しは、大人にとっても大きな出来事です。
けれど子どもにとっては、
慣れた家を離れること。
友だちと別れること。
見慣れた景色が変わること。
それらすべてが、自分の世界の一部を手放す体験でもあります。
そのため、
- ぼーっとする
- 落ち着かなくなる
- イライラする
- 甘えが強くなる
といった形で気持ちが表れることがあります。
もちろん、すべての子どもに同じ反応が起きるわけではありません。
ただ、「困った行動」に見えるものの背景に、
子どもなりの戸惑いや寂しさが隠れていることもあるのかもしれません。
最後に、お母さんはこんな言葉を話してくださいました。
「親も必死なので、余裕がないと正直面倒くさいと思ってしまうし、付き合うのに疲れる。
でも、その感情を我慢されるより、教えてくれた方がいいと今は思ってる!」
子どもの感情も、親の感情も、どちらも自然なもの。
環境の変化の中では、家族みんながそれぞれの形で揺れているのかもしれません。

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