夏休みが近づくと、海外で学ぶ子どもを持つ保護者の間で気になるのが、
「子どもはせっかく覚えた英語を忘れてしまわないだろうか」
ということではないでしょうか。
長い休みの間に、これまで身につけてきた英語力や学力が落ちてしまうのではないか。
新学期に学校へ戻ったとき、英語での授業についていけるだろうか。
そう心配になるのは、とても自然なことだと思います。
教育研究では、長期休暇中に学校での継続的な学習機会が減ることで、学力や言語力が停滞したり、一部低下したりする現象を「サマースライド(Summer Slide)」と呼びます。
ただし、これは単に「夏休みに勉強を忘れてしまう」という話ではありません。
休暇中にどのような言語環境や学びの機会があるかによって、維持される力もあれば、伸びる力もあります。
特に一時帰国は、日本語で知識を広げ、表現力や語彙を育てる貴重な時期にもなります。
そして、日本語で育てた力は、決して英語の邪魔になるものではありません。
むしろ、新学期に英語で学ぶ力を支える土台にもなっていくのです。
夏休みに英語力を維持するために大切なこと
一時帰国中は、日本語に触れる時間が増える一方で、英語を使う時間はどうしても減りやすくなります。
だからこそ、英語を完全に止めてしまうのではなく、細く長く続けることが大切です。
たとえば、毎日少しだけ英語の本を読む。
英語の音声を聞く。
好きな動画を英語で見る。
難しいワークをたくさん増やすよりも、「英語に戻る感覚」を残しておくことが大切だと感じています。
特に多読は、語彙や読解力だけでなく、英語で考える感覚を保つ助けになります。
夏休み中に英語を大きく伸ばすというより、新学期に学校へ戻ったときに、英語で学ぶ生活へスムーズに戻れるようにしておく。
そんなイメージです。
一時帰国中に日本語で学ぶ力を育てる
一方で、一時帰国は日本語を伸ばす大きなチャンスでもあります。
ここで大切なのは、日本語を「国語の勉強」としてだけ捉えないことです。
日本語で言葉を増やすこと。
自分の考えを説明すること。
知らなかったことを調べ、まとめ、誰かに伝えること。
こうした経験は、日本語力を伸ばすだけではありません。
物事を理解する力、考えを整理する力、相手に伝える力を育てます。
そしてそれは、新学期に英語で学び直すときの土台にもなります。
普段の学校生活では、授業や宿題、習い事に追われ、じっくり調べ学習をする時間はなかなか取れないこともあります。
だからこそ、夏休みは子どもの興味や、その時期に必要な力を日本語で育てるよい機会です。
ある年は語彙を増やす。
ある年は読解力をつける。
ある年は調べてまとめる力を育てる。
ある年は人前で話す経験を増やす。
その時々の子どもに必要な力を、日本語という安心できる言葉で育てていく。
それは、海外で学ぶ子どもたちにとって、英語を止めることではなく、むしろ英語で学ぶ力を支える大切な準備になります。
また、夏休みにどのような経験をするか考える際には、普段通っている学校の先生との面談も大きなヒントになります。
「読解問題になると内容を十分理解できていない」
「自分の考えを書くことが苦手」
「プレゼンテーションで自信を持って話せない」
など、学校生活の中で見えてきた課題は、必ずしもドリルだけで克服する必要はありません。
例えば、読書を増やしたり、興味のあるテーマについて調べて家族に発表したりすることで、弱かった部分を補うことができる場合もあります。
また、負担にならない程度に、短い作文や日記などに取り組むのもよいでしょう。
夏休みは、学校生活の中で見えてきた課題に、じっくり向き合える貴重な時間でもあるのです。
調べ学習やプレゼンテーションも、立派な学び
夏休みには、普段なかなかできない調べ学習もおすすめです。
テーマは、子どもが興味を持てるもので十分です。
恐竜でも、昆虫でも、宇宙でも、歴史でも、食べ物でも、スポーツでもいい。
大切なのは、子どもが「知りたい」と思ったことを、日本語で調べ、日本語で考え、日本語で表現する経験を持つことです。
調べたことを家族に話す。
ノートにまとめる。
簡単なスライドにする。
家族の前で発表する。
探してみると、オンラインを含め、こうした力を育てる講座やワークショップが見つかるかもしれません。
こうした活動は、語彙力や表現力だけでなく、探究する力やプレゼンテーション力にもつながります。
言語は、ただ覚えるものではなく、考え、伝えるための道具です。
だからこそ、夏休みには「何を勉強するか」だけでなく、「どの言葉で考え、どう表現するか」も大切にしたいところです。
日本だからこそできる体験をする
一時帰国中は、日本だからこそできる体験に参加することも、子どもの学びを広げてくれます。
サマースクール。
地域のイベント。
短期の習い事。
ボランティア活動。
図書館や博物館、科学館での体験。
こうした場では、日本語が単なる学習対象ではなく、人と関わり、何かを体験するための言葉になります。
言葉は、人との関わりの中で育ちます。
同年代の子どもたちと活動したり、大人に質問したり、自分の考えを伝えたりする経験は、日本語力だけでなく、所属感や自己効力感を育てることにもつながります。
わが家の場合
わが家でも、一時帰国中は「英語を維持すること」と「日本語で世界を広げること」の両方を意識してきました。
たとえば、ひらがなは完璧を目指すというより、日本での生活を楽しめる程度に読めるように準備しておく。
英語は多読などで、細く続ける。
日本語では、本を読んだり、興味のあることを調べたり、家族に話したりする。
特別なことをたくさんしていたわけではありません。
ただ、その時期の子どもに必要な力を見ながら、英語と日本語のどちらか一方ではなく、両方の言葉が子どもの学びを支えるように意識していました。
おわりに
夏休みを、「英語を忘れないための期間」とだけ考えると、親も子どもも少し苦しくなってしまいます。
もちろん、英語を完全に止めない工夫は大切です。
でも同時に、一時帰国は日本語で知識を広げ、表現力や語彙を育てる貴重な時間でもあります。
日本語で考える。
日本語で調べる。
日本語で伝える。
その経験は、英語で学ぶ力ともつながっています。
海外で育つ子どもたちは、複数の言葉と文化の間を行き来しながら、自分の学びを育てています。
夏休みは、その言葉と言葉、経験と経験をつなぐ時間。
「英語を忘れないようにする」だけでなく、「どんな力を育てたいか」という視点で夏休みを考えてみると、長期休暇の過ごし方も少し違って見えてくるのではないでしょうか。

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